ユートビートのベートーベン「熱情ソナタ」のフィナーレ。ミキシングなしの演奏

4年制音大ピアノ科を卒業していなくとも、ここまで上手く弾けるのは驚きです。

しかも、ベートーベンの中期をかざる傑作、熱情ソナタの終楽章です。

この時すでにベートーベンは、完全に聴力を失っていたと云われます。

完全に音の世界を喪失した楽聖ベートーベンの苦悶が描き出されています。

フィナーレは突然におとずれる

終楽章は、アレグロ マ ノン トロッポ から プレスト 4分の2拍子 Fマイナー

当然、ディミニッシュ セブンス コードが強く奏でられる。

ベートーベンは、前章である アンダンテ コン モート(Dフラットメジャー)とは打って変わり、完全なる聴力の喪失を予告する。

そして、左手はFを奏でて、右手はCからアルベジオが開始される(第一主題)。

ユートビートの演奏では、これからつづくベートーベンの苦悩のはじまりの導入部が成功している。

このアルベジオの短い煩悶が終わると、突然、左手で、CとAフラットのマイナーセブンが鳴る。

第二主題に導入する前の部分は、技術的に大変難しいのであるが、難なく経過する。
そして、第二主題のフォルツァンドピアノの指示についても、とても上手い。

第二主題のマイナー トライアドは、終楽章が開始されてから75小節経過しても、耳の病気は治まることなく、まったく聴力が聞こえていないことを暗示する。

だからこそ、88小節から、左手のマイナー トライアドで奏される第二主題の上に、右手で2オクターブ上のAフラットによるトレモロが演奏される。

96小節からはじまる両手のユニゾンは、右手と左手の音符が噛み合っていない。

そして、112小節のCマイナーシックス オンGマイナーの和音で一旦その苦悩を振り切り、右手と左手による、小さなアルペジオで最初の幕を閉じる。

ラ セコンダ パルテ デュエ フォルテについて

ユートビートの演奏では、ピアニッシモの指示を忠実に守り、最低音である左手のFの4分音符を忠実に表現する。

そして、右手のAではじまる16音符のアルペジオのわずか4小節の経過部をやさしくこなす。

122小節から、クレッシェンドの指示があって、右手と左手が噛み合わず、123小節(フォルツアンド)、124小節(フォルツアンド)の後、125小節(ディミヌエンド)にて、右手が、オクターブでGフラット、F、Aの8分音符の短いフレーズを奏でる。

展開部では、第一主題だけが展開されて、つづいて、新しくリズム感のあるフレーズが演奏される(142小節から)。

ユートビートは、フォルツァンドピアノの指示を忠実に守って、フレーズの変わり目をわかりやすく表現している。

わずか16小節のフレーズであるも、結末はわかっていた。

158小節は、ピユフォルテの指示があって、左手は、Fのマイナー トライアド。

右手は、Cの16分音符のアルペジオで演奏される。

それから、右手と左手が噛み合わないユニゾンではじまる部分が9小節半つづいて、カデンツアに向かって、右手によるオクターブの連打が演奏され。

178小節から、フォルティッシモのディミニッシュト セブンスの和音の合図によって、カデンツアが開始される。

再現部とコーダ(プレスト)について

演奏者は疲れをみせることなく第一主題がふたたび提示される。

ただし、最初にはみられなかった、E、F、G、Aフラット、Fの8分音符の短いフレーズが登場する。

おそらく、このフレーズは、ベートベンの耳が、まったく聞こえていないか、あるいは、うっすらと聞こえていたかもしれないこと(又はベートーベンは聞こえていると錯覚したなど)を暗示する。

また、再現部の第二主題は、DフラットとBフラットの2音による和音ではじまる。

291小節から、はじめと同じように、右手と左手が噛み合わないユニゾンではじまる部分が8小節演奏されて、第一括弧は8小節ある(この中で2小節分は291小節からはじまる部分のつづきと思われる)。

第二括弧の8小節はコーダ(プレスト)につづく部分と考えられる。

第二括弧内の指示は、フォルツァンド、ピュフォルテ、センプレ ピユアレグロである。 

コーダ(プレスト)は、Fのマイナー トライアドであって、右手は、Fの上の2音を1オクターブ下に転回している。

ベートーベンは、聴力が回復することについて、もはや諦念にいたったのであろう。

2小節の全和音(フォルテ)の後、ピアノによって、8分音符のリズムある旋律を奏ではじめる。

第二括弧(324小節)からはじまる部分では、右手の16部音符の連続の下で、左手は息切れするようなフレーズを演奏する。

やはり、右手と左手のフレーズが噛み合っておらず、その怒涛のなかで終わりをむかえる。

すなわち、Fのマイナー トライアドであって、息切れするような8分音符の和音が、3回演奏されて演奏は停止される。

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